1.円形脱毛症とは
突然、円形もしくは類円形に毛が抜けて脱毛斑を生じる疾患です。多くは頭髪の脱毛症状ですが、髪の毛だけでなく体毛すべての毛に認められます。数か月の経過で自然治癒することもありますが、難治性や再発性のものもしばしばみられます。ストレスが原因とよく聞くかもしれませんが、近年では自己免疫疾患と考えられています。
2.原因
2-1.自己免疫疾患
円形脱毛症は、毛包組織に対する自己免疫疾患と考えられています。Tリンパ球が毛根を攻撃してしまうために発症すると考えられていますが、なぜそのような異常が起こるのかはまだ明らかになっていません。実際に顕微鏡で皮膚を調べると、毛包周囲にリンパ球を主体とした細胞が増えているのが観察されます。自己免疫疾患の合併が多いことや、免疫修飾作用のある治療法に効果をみることも、自己免疫病因説を支持しています。
2-2.遺伝
円形脱毛症は人種を問わず発症し、男女差はなく、全年齢層に出現します。海外の報告で、患者の約8%に家族内発症があったり、親等が近いほど発生率が高かったりと、遺伝は関係しているようです。ただし家族に円形脱毛症のひとがいるから必ず発症するというわけではありませんので、考えすぎないようにしましょう。
2-3.合併症
円形脱毛症には、甲状腺疾患や、尋常性白斑、関節リウマチなどの自己免疫疾患が合併することが知られています。これらの合併症の有無を確認するため、血液検査などを行うことがあります。
2-4.アトピー素因
円形脱毛症には、甲状腺疾患や、尋常性白斑、関節リウマチなどの自己免疫疾患が合併することが知られています。これらの合併症の有無を確認するため、血液検査などを行うことがあります。
2-5.ストレス
何かしら強い精神的ストレスをきっかけに発症する患者さんはいらっしゃいますが、多くの人は関係なく始まっています。疲れや感染症など、肉体的精神的ストレスが引き金になる可能性はありますが、実際には明らかな誘因がないことも多く、原因というよりはきっかけになるのかもしれません。現在は直接の関連性についての科学的根拠は乏しいですが今後の報告が待たれます。
3.円形脱毛症の分類4つ
3-1.通常型
最も多く、脱毛斑がひとつの「単発型」、複数の脱毛斑を認める「多発型」があります。単発の通常型以外は難治で再発を繰り返す症例が多いです。
3-2.全頭型
進行して、脱毛巣が全頭部に拡大したもので、頭髪のほとんどが脱落します。
3-3.汎発型
脱毛が全身に拡大するもので、眉毛、まつ毛、ひげ、腋毛、陰毛が抜けます。
3-4.蛇行型
生え際が帯状に脱毛するもので、難治性です。
4.治療
4-1.塗り薬
病気が始まったばかりで脱毛範囲が狭い場合は、ステロイドや塩化カルプロニウムなどの外用療法がメインになります。毛髪に対する免疫反応を抑えたり、毛髪部の血流を良くしたりすることで脱毛の改善をはかります。ステロイドの塗り薬の副作用として、毛包炎や皮膚の萎縮、血管拡張などがあり、漫然と長期使用はしません。
4-2.飲み薬
セファランチン、グリチルリチンなどアレルギーを抑える作用がある内服薬を使用します。アトピー素因のある患者さんには抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の併用が有用です。急速に拡大するときはステロイドを内服する場合がありますが、副作用として高血圧や糖尿病のリスクなどありますので長期間は内服できません。また子供さんには成長障害を引き起こす可能性があるため使用できません。
4-3.注射
脱毛範囲が狭いものの経過が長引くようなら、脱毛部にステロイドを局所注射する方法があります。副作用として痛みを伴うこと、注射したところがへこんでしまうことがあり得ることです。急速に拡大する場合は入院してステロイドを大量に点滴する場合もあります。
まとめ
脱毛症には様々な種類があり、円形脱毛症は脱毛症の中でも最も多い病気です。脱毛した面積が大きいほど、脱毛してからの経過が長いほど、治りづらくなります。症状や年齢に応じた適切な治療が必要です。